私たちの周りで、あの人は只者ではない、と言われているおじいちゃんがいる。
彼は、私がよく行くカフェの社長さんだ。
私は、こっそり彼を「じいじい」と呼んでいる。もちろん愛情を込めて、である。
その「じいじい」が只者ではないと思われる理由は、幾つかある。
一つに、カフェに行くと、彼がたびたび談笑しているのを見かけるのだが、その相手は、なにやら、彼に相談をしたりしているようなのである。なんとなくご意見番という雰囲気が漂っているのだ。
一方で、カフェの各テーブルには、素敵な野花が飾られているのがだが、その野花を活けているのは、じいじいらしい。
とはいえ、通常じいじいは、いつものんびりとしていて、悠々自適の隠居生活よろしく、夕刻になると夕日を眺めているのか、居眠りをしているのか、よく分からない態度で、瞑想に耽っていたりする。
先日、私は、ついに彼に話しかけたのだった。
ジイジイの話は、60年ほどさかのぼり、じいじいが高校を卒業し、長崎から大阪へ出てきたところから始まる。
小さな建築会社に入って、がむしゃらに営業したら、誰よりも仕事ができたので、これなら一人でやったほうが儲かるのではと思い、相棒を誘って会社を始めたんだそうだ。
以後、じいじいは、お客さんたちと一緒になって儲かる店作りを40年あまりしたそうで、60歳で一度引退した後、夕日の美しさに惚れ込み、池のほとりに建てたカフェのオーナー社長をしている。
そんなじいじい曰く、
「素直でいることが大切ですよ。素直でいると、いろんな情報が入ってきます。素直じゃない人は、周りに人の話を聞かないし、そういう人のところには、人は集まってきません。」
確かに、人からの情報は、会話の中でもたらされ、思わぬ情報が向こうからやってくるという感じがしています。そうなると、誰と付き合うかも大事になる。
「勉強することも大切ですよ。私も毎日勉強しています。」
さすが、我らがじいじい。なんでも、80歳を過ぎた今も、じいじいは、勉強会に参加したり、毎日、オーディオブックを欠かさず聞いたりして、勉強を続けておられるんだとか。
「そして、プラス思考。何か嫌なこと、辛いことがあったら、それを乗り越えることで得ることがある、どんなことも与えられた試練である、と。これがプラス思考だな。」
じいじいの語るプラス思考は、とにかく前向きというのではなく、乗り越える強さ、耐える強さにあるようだ。
この「素直であること」、「勉強すること」、「プラス思考」が成功の秘訣なのだそうな。 なるほど。
やっぱりじいじいは只者ではなかったなと思いつつ、じいじいの教えを、ありがたく受け取って、私は帰った。
私は、勉強は好きだけど、プラス思考は苦手。これから精進あるのみだ。
何はともあれ、じいじいのありがたい話が聞けたのも、私の素直さのおかげかな。
*エッセイ的なもの