てつねこくおりてぃ

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【エッセイ】ひとり旅

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もうずいぶん前になるけど、バイクに乗ってひとり旅に出たことがあった。目指すは遠く九州は阿蘇山だ。

宿は、相部屋で二段ベッドを使用するなど滞在者交流型の宿泊施設であるユースホステルに決めていた。というのも、 当時まだ、うら若き乙女の名残もあり、不安いっぱいのひとり旅だったので、同じ部屋に誰かいてくれれば心強いと考えたのだ。

朝早くから、ほぼ1日、高速道路を走り続け、どうにかこうにかたどり着いた宿は、細い砂利道を進んだ森の奥にあった。

宿と思しき綺麗な建物に入っていくと、出迎えのおじさんは、 「あなたが今日泊まるのはあれですよ。」と、窓の外の山の斜面を指差した。見ると山の斜面に、山小屋が数棟点在している。

あ、あれか。

あろうことか私の予約していたユースホステルは、管理等を中心にバンガローが点在する、よくある感じのキャンプ場だった。 予約の際に見た建物の写真は、中心に建つ管理棟だったのだ。

しかも、「明日には何人か来ますが、今日この敷地内に宿泊するのは、あなただけですから、ゆっくりしてくださいね。」とおじさんは言う。 

なぜだ。なぜこうなる。

私は管理人に懇願し、なんとか管理棟の一室に泊めてもらうとにした。おじさんは、「せっかくだから、山小屋に泊まればいいのに。」と不思議そうな顔をしたが、私は頑として譲らなかった。日頃から小さい電気をつけないと眠れない私が、暗闇に建つ山小屋に一人きりで泊まれるはずがない。ましてや私は、霊感もないのにお化けが怖い、自他共に認める怖がりだ。

私の不安をよそに、夕方近くになると、おじさんは、「何かあったら、この下の方の建物にいますから電話してください。」と言い残し、薄暗がりの中、去っていった。

私以外に宿泊客がいない場合には、たとえユースホステルであろうとも、何ら交流のしようもないことを私は考えもしていなかった。私は、広いキャンプ場に、一人ぼっちになってしまった。 

 

その夜、私はこうこうと蛍光灯をつけ、どんな小さな音も聞き逃さなかった。いつまでたっても眠れなかった。なんとか眠る方法はないかと考えに考え、当時、一人暮らしをしていた私は、今、私が置かれている状況は、一人暮らしの夜と大して差はない、いつも通りに眠ればいいのだと思い込むことにした。

 

しかし、ひとりぼっちの夜に、思いつくことにはろくなことはない。

私はさらに考え続け、ひとり旅は一人暮らしと同じという考えは、「逆も真なり」、一人暮らしはひとり旅と同じという考えへと発展した。

私が生きていること自体が、ひとり旅なのかもしれない。

この「人生ひとり旅」という演歌のタイトルにもならないようなくだらない考えは、この夜以来、私につきまとうことになった。

 

それから、私はひとり旅を重ね、今ではむしろ、ひとり旅の方が自分にはしっくりくるようになった。 ひとり旅は、好きな時に、好きな場所へ、好きなように行くことができる。つまり、私のわがままを最優先することができるのだ。

 私の人生は、いたりいなかったり、連れがいるようでいないような、気ままなひとり旅を続けている。

自由を重んじるといえば聞こえはいいが、自分以外の人と、歩調を合わせるのが苦手なだけだ。とはいえ、私のわがままを最優先にした人生を楽しんでいるともいえる。そう思えば、ひとり旅の人生もそう悪くはないと思えた。

 

 

 

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