30-2016 9月29日
私が払ったお金は、領収書という紙切れに書かれた数字になって、私の手元に戻った。
何かを得るためには、何かを失う。
これでいいんだ。私は、夢のために、前進したのだ。
31-2016 9月30日
ほんとの日記は、全然続かない私だが、うそ日記は、なぜか1年続いた。
とあるお方に、あなたは、いい意味で嘘をつける人と言われたが、ほんとかもしれない。
32-2016 10月1日
ようやく秋らしくなったばかりというのに、毛皮のコートを引っ張り出して来た。
今日のラッキーアイテムらしい。
占い師のセンスを疑う。
33-2016 10月2日
コーヒーを片手に雑誌のスイーツを眺める。
食べた気になって、コーヒーを飲むというのは、実に苦々しいことだ。
34-2016 10月3日
明日、初めて裁縫箱を持って学校へ行く。
家庭科の授業で使う私だけの裁縫箱だ。
最初はぞうきん、そしていつかはドレスを縫いたい。お姫様みたいなやつを。
35-2016 10月4日
手のひらのツボを押した。シャーペンの先でも突いた。
眠い。
だが、今眠るとまずい。私はケースから、最後の一粒を取り出した。食べると口がスースーするだけだが、これをいつ口に入れるかばかり考えていて、会議の内容など耳に入らなかった。
36-2016 10月5日
友達の部屋に遊びにいったら、アイドルのポスターが、1番目立つところに貼ってあった。その作ったような笑いと目線が気になる以上に、あいつが好きだったのかという驚きで、動揺が隠せなかった。
37-2016 10月6日
カレーを一口頬張ると、ぐっと煮込んだ野菜の甘みが広がった。
そのあと襲いかかる辛さが、全てを消し去る。そうしておいてまた、次の一口をほおばる。
人の求める幸福は複雑さの中にあるのかもしれない。
38-2016 10月7日
お弁当にきんぴらゴボウを入れてくれるなと娘から苦情あり。
茶色いし可愛くないからだと言う。ならばとピーマンを加えてみる。お弁当戦争は続く。
39-2016 10月8日
コンタクトを外すと、途端に世界は、ぼんやりと霧に埋もれる。
私にとってはこの世界が本物で、あの見えすぎる世界は作り物のようだ。
人の顔すら薄ぼんやりとする世界こそが、わたしの居場所なのだ。
40-2016 10月9日
実りの秋が来た。世間では、松茸のお吸い物と同じ香りのするキノコを焼いたり、土瓶に入れて蒸したりするらしい。
*うそ日記3