21-2016 9月19日
窓辺に置いた貯金箱に、今日は100円玉を一枚入れた。
コトリと音がして、また少し、夢に近づいた。
ずっしりと重い貯金箱に思いをこめて振ったら、じゃらんじゃらんといい音がした。
22-2016 9月20日
電車の中で小説を読んでいて、うかつにも涙が溢れてしまった。
隣の人が、そっとハンカチを出してくれて、余計に涙がまらなくなった。
23-2016 9月21日
高く上がったファールボールは、どんどん高く高く上がって、どんどんどんどん近づいてくる。
私はぐっと目をつむったが、ボールは私の遥か遠くに落ちた。
なんでも自分に向けられていると思って生きるのは、やめなきゃなと思った。
24-2016 9月22日
髪をかきあげると、細いチェーンのブレスレットが揺れて、手首から肘へとずり落ちた。
その腕をとって歩けたら、どんなにいいだろうと、僕は目を細めて君を見た。
まぶしいのは、ブレスレットじゃないよ。
25-2016 9月23日
柔らかな日差しと、木の葉を揺らす風に誘われて、スケッチブックを持って、久しぶりにデッサンに出かけた。
穏やかな午後の公園で大きく深呼吸をした。
線にならない何かも表現したいと思った。
26-2016 9月24日
今日の私は、話して書いて、一体いくつの言葉を使ったのかな。
辞書の中で、たくさんの言葉が出番を待っている。いろんな言葉を並べて、私は豊かになる。
27-2016 9月25日
彼の袖口のボタンが取れてるって、遠くから見てたって気が付いてた。
けど、ソーイングセットを持ってるって、言えなかったな。
女子力見せつけるチャンスだったのに、あの子も持っているなんて。
28-2016 9月26日
香水をつけていると、香りが自分の弱さを隠してくれるような気がしていた。
香水をつけなくなった今、私は一つ殻を破れた気がしている。
29-2016 9月27日
シガーライターを左手で押し、右手で窓を薄く開ける。
そうしておいて、タバコをに火をつけると、すーっと煙を吐く。
この一連の流れを見ることが、助手席の私の特権だ。
30-2016 9月28日
幸せの香りを振りまきながら、キッシュは焼き上がった。
焼きたてのふんわり感を味わって欲しくて、あなたの帰りを今か今かと待っている。
* うそ日記2